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浦和地方裁判所 昭和24年(ワ)214号 判決

原告 葛原工業株式会社

被告 埼玉県学校給食消費組合 外四名

一、主  文

被告埼玉県を除く爾余の被告等は、原告に対し、合同して金百四十万円及びこれに対する昭和二十四年五月二十六日から右完済に至るまで年六分の割合による金員を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを五分し、内二は被告埼玉県を除く爾余の被告等の連帯負担とし、その余は原告の負担とする。

この判決は、原告において、被告埼玉県を除く爾余の被告等に対し、それぞれ金五十万円の担保を供するときは、仮に執行することができる。

二、事  実

原告訴訟代理人は、「被告等は原告に対し連帯して金四百四十万円及びこれに対する昭和二十四年五月二十六日から右完済に至るまで年六分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告等の負担とする。」との判決並びに担保を条件とする仮執行の宣言を求め、その請求の原因として、「被告埼玉県学校給食消費組合は学校給食に必要な物資の製造、販売、斡旋等を業とし、埼玉県内学校給食を実施の小学校で組織する、代表者を定めある、権利能力ない社団であるところ、昭和二十四年三月二十四日、孰れも原告を受取人として、金額二百万円、満期同年五月二十三日、支払地振出地共に浦和市、支払場所株式会社埼玉銀行本店なる約束手形三通(甲第一乃至三号証の各一、二)を振出し、被告青木助次、同日本教育産業株式会社、同村井健郎、同埼玉県は右手形に振出人のため保証をした。原告は、右手形の内一通(甲第一号証の一、二)を取立委任のため埼玉銀行東京支店に裏書譲渡をなし、同銀行東京支店は右手形一通(甲第一号証の一、二)を、原告は爾余の二通の手形(甲第二、三号証の各一、二)を夫々満期に支払場所に呈示して支払を求めたところ、孰れも支払を拒絶された。原告はその後埼玉銀行東京支店から前記手形(甲第一号証の一、二)の返還を受け、現に右手形三通(甲第一乃至三号証の各一、二)の所持人である。而して原告は昭和二十四年三月二十四日被告埼玉県学校給食消費組合を受取人として、金額百五十万円、満期同年五月二十九日、支払地振出地共に東京都千代田区、支払場所日本勧業銀行なる約束手形一通を振出し、被告埼玉県学校給食消費組合に対し、右手形金債務を負担しているので、本件訴状を以つて前記三通の手形(甲第一乃至三号証の各一、二)中甲第三号証の一、二の手形債権と対等額で相殺する意思表示をなし、更に昭和二十五年一月二十七日被告組合から金十万円の弁済をうけたので、茲に被告等に対し右手形金から右合計金額百六十万円を控除した残額四百四十万円及びこれに対する満期後である昭和二十四年五月二十六日から完済まで手形法所定の年六分の利息の支払を求めるため、本訴請求に及んだ次第である。なお被告埼玉県の保証については、本件手形に埼玉県教育委員会事務局体育課長と記名し、その名下に同課長の公印を捺印して、振出人のために保証してあるが、右職名の表示及び捺印だけでも如何なる者がその行為をなしたか鑑別できるから手形法上の署名として有効であるところ、右は同体育課長がその職務執行に当りなしたものであつて、当時同課長にも教育委員会を代表する権限があつたから、右行為は同委員会の行為として認められるところ、同委員会は埼玉県の執行機関に過ぎないから、埼玉県が究極的に右手形保証行為の責任を負うものである。仮りに体育課長に県教育委員会を代表する権限がないとしても、体育課長は県教育委員会事務について一定範囲で対外的に同委員会の事務を処理する権限があるから、原告において同課長に手形保証の権限ありと信ずべき正当な理由があるものと言うことができる。従つて体育課長の前記手形保証行為について執行機関の行為として埼玉県に支払義務があるのである。」と附陳し、被告埼玉県学校給食消費組合、同青木助次、同日本教育産業株式会社の抗弁に対し、「原告は被告組合から金百五十万円貸与されたい旨の申込をうけたが、これを拒絶して、代りに本訴において相殺を主張する前示約束手形一通を被告組合に振出したものである。又原告と被告埼玉県学校給食消費組合との間に被告主張の如きミルク、ヌガーの売買契約があつたこと及び被告主張の契約解除の通知あつたことは認めるが、右ミルク、ヌガーは約旨に従つて昭和二十四年三月二十二日から同年四月二十日までの間十回位にわたり被告に対し既に引渡済である。被告のその余の主張事実は否認する。凡そ商人間の売買において、買主がその目的物を受取つたときは、遅滞なくこれを検査し、もしこれに瑕疵又は数量不足を発見したときは、直ちに売主に対しその通知を発するのでなければ、その瑕疵又は不足に因つて契約の解除又は代金減額若くは損害賠償の請求はできないから、この点からしても、品質不良のため本件手形の支払義務がないとの被告の主張は理由がないものである。」と述べた。<立証省略>

被告等訴訟代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、被告埼玉県学校給食消費組合、同青木助次、同日本教育産業株式会社三名訴訟代理人は、被告青木助次の答弁として、「被告青木助次は個人として手形保証をしたのではなく、被告埼玉県学校給食消費組合の専務理事として同組合を代表して保証したのであるから、青木個人を被告とする原告の請求は当事者適格を欠くものである。」と述べ、被告埼玉県学校給食消費組合、同青木助次、同日本教育産業株式会社三名の答弁として、「被告埼玉県学校給食消費組合が原告主張の約束手形三通「甲第一乃至三号証の各一、二)を振出したこと、原告が甲第二、三号証の各一、二の手形所持人であることは認めるが、その余の原告主張の事実は否認する。甲第一号証の一、二の約束手形の原告より埼玉銀行東京支店に対する裏書譲渡には、取立委任を示す文言がないから、通常の裏書譲渡と認める外なく、従つて同銀行から更に原告に裏書譲渡しない限り、原告を右手形の所持人と認めることができない。」と述べ、抗弁として、「本件手形三通の内、一通については原告がこれを割引いて内金百五十万円を被告組合に貸与すること、残額金四百五十万円は昭和二十四年二月頃、原告と被告埼玉県学校給食消費組合間に締結された売買契約に基いて、引渡予定の学童配給用ミルク、ヌガー三十万函(一函金十五円)の売買代金債務金四百五十万円に充当することの契約で、被告組合が原告を受取人として本件手形三通(甲第一乃至三号証の各一、二)を振出したところ、原告は右契約に反し、金百五十万円の貸与をせず、又ミルク、ヌガー三十万函については、被告組合は昭和二十四年四月中これを受領したが、見本と相違してミルク、ヌガーが溶け出し、しかも重量成分共に見本に劣る隠れた瑕疵があつて販売の目的を達することができないので、原告に対し同年六月十三日内容証明郵便をもつて前示売買契約解除の意思表示をなし、その頃右書面は原告に到達した。よつて被告組合は原告に対し何らの債務をも負担しないことになつたから、被告等は原告に対し本件手形金を支払う義務がないものである。」と述べた。<立証省略>

被告村井健郎訴訟代理人は答弁として、「原告の主張事実中被告村井健郎に関する部分は全部これを否認する。その余の事実は不知。なお被告組合、同青木助次、同日本教育産業株式会社等三名主張の抗弁事実を利益に援用する。」と述べた。<立証省略>

被告埼玉県訴訟代理人は答弁として、「原告主張事実中埼玉県教育委員会事務局体育課長が本件手形に保証をしたことはこれを否認する。その余の主張事実はこれを争う。本件約束手形表面の埼玉県教育委員会事務局体育課長なる記名捺印は同課長がしたのでなく、当時右体育課の職員早川一彦が何らの権限もないのに、擅に右の記名捺印をしたもので、偽造であるから、無効であるのみならず、本件手形には単に体育課長と記載してその名下に捺印あるに過ぎないので、かかる単なる資格の表示及び捺印だけでは、手形上埼玉県として有効な署名とは言い難く、署名自体無効である。しかも体育課長は対外的に教育委員会を代表する何等の権限なく、又教育委員会自体かかる手形保証をする権限はないのであるから、表見代理の問題を生ずる余地もない。従つて孰れの点からみても本件手形について埼玉県には何等の責任はないものである。」と述べた。<立証省略>

三、理  由

一、原告と被告埼玉県学校給食消費組合、同青木助次、同日本教育産業株式会社との関係について、

先ず成立に争のない甲第八号証によれば、被告埼玉県学校給食消費組合が原告主張の如き代表者の定ある権利能力ない社団であることが認められるから、当時者能力を有するものと解することができる。

次に被告青木助次は本件甲第一乃至三号証の各一、二の約束手形の保証は個人としてでなく、被告組合の専務理事としてなしたものであるから、被告青木助次に対する原告の請求は、当事者適格を欠くものであると主張するので、この点を判断するに、成立に争のない甲第一乃至三号証の各一によれば、本件手形面には「埼玉県学校給食消費組合専務理事青木助次」と記載されている。組合の専務理事として保証をしたと謂う被告青木の主張は、即ち組合として保証をしたものであるとの主張と解釈されるのであるが、組合が本件手形の振出人であることは当事者間に争のないところ、振出人と同一人が保証をすることは法律上意味がなく、又手形行為は行為者の意思に拘泥することなく手形に記載した文言によつて客観的に解釈すべく、又手形はできるだけ有効に解釈すべきであるから、右保証は青木助次個人の保証と解釈するのが相当であり、この点についての被告青木の主張は理由がない。

次に原告主張の如き約束手形(甲第一乃至三号証の各一、二)が振出され、原告が現に甲第二、三号証の各一、二の手形の所持人であることは当事者間に争がない。原告は甲第一号証の一、二の約束手形についても所持人であると主張するけれども、成立に争のない甲第一号証の一によれば、原告から埼玉銀行東京支店への裏書譲渡の事実が認められるのみで、右裏書につき手形法所定の取立委任を表わす文言の記載がなく、原告は右裏書は取立のためのものであると主張するが、取立委任のための裏書は手形法所定の方式によらなければその効果が認められないから、隠れた取立委任なるものが人的抗弁として認められる場合あるに過ぎないことは手形の要式性から当然のことである。よつて他の事項を判断するまでもなく、手形上の記載自体から裏書の連続により本件手形を取得したことが認められない以上、原告が甲第一号証の一、二の約束手形の所持人であると認めることができない。

次に成立に争のない甲第二、三号証の各一、二によつて原告が甲第二、三号証の各一、二の手形を夫々満期に、支払場所に、支払のため呈示したところ、孰れも支払を拒絶されたことが認められ、他に右認定を左右するに足る証拠はない。又成立に争のない乙第二号証、証人石崎茂男の証言、被告青木助次の本人訊問の結果によつて、原告が昭和二十四年三月二十四日被告組合を受取人として、金額百五十万円、満期同年五月二十九日、支払地、振出地共に東京都千代田区、支払場所日本勧業銀行なる約束手形一通を振出したことが認められるところ、原告は本件訴状をもつて昭和二十四年十二月十二日、これと甲第三号証の一、二の約束手形金二百万円の内金百五十万円と対等額で相殺の意思表示をしたことは本件記録に徴し明らかである。

次に被告等主張の抗弁事実について判断する。

先ず原告が被告組合に対し本件手形を割引いて金百五十万円を貸与する旨約定したとの被告の主張についてはこれを認めるにたる確証なく、かえつて成立に争のない乙第二号証及び被告青木助次の本人訊問の結果によれば、被告組合から原告に対し当初被告主張の如き融資の申込があつたが、原告はこれに応じないのでその代りに被告組合に対し乙第二号証の約束手形一通を振出したことが認められる。証人石崎茂男の証言中右認定に反する部分は信用するに足らず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。よつて融資についての被告の抗弁は理由がない。

次に被告等の瑕疵担保の抗弁について判断する。先ず原告と被告組合との間に、被告主張の如き学童配給用ミルク、ヌガー売買契約が締結されたことは当事者間に争なく、弁論の全趣旨によれば右売買代金四百五十万円の支払に充当するため本件三通の手形(甲第一乃至三号証の各一、二)が振出されたことが認められるところ、前記売買契約に基き原告が昭和二十四年四月中被告組合に対しミルク、ヌガー三十万函を引渡したことは当事者間に争がない。

次に被告青木助次の本人訊問の結果によれば前示売買契約が見本に基いて締結されたことが認められる。証人石崎茂男の証言中右認定に反する部分は措信し難く、他に右認定を左右するに足る証拠はない。しかして見本売買なるものは他日引渡されるものが見本と同一の品質を有することを売主において請負つたものと看るのが当然であるから、現に引渡されたものが見本に劣るとの主張があるときは、売主において見本と同一のものを引渡したとの立証責任を負うものと解すべきところ、原告において見本通りのものを引渡したと認めるに足る立証がなく、かえつて証人持田清吉、伊藤致和の各証言、被告青木助次の本人訊問の結果を総合判断するに、見本と相違して引渡当時既に相当程度軟化し、重量及び成分も劣つていたこと、並びに紙袋に収容され且つ箱詰であるから外観より瑕疵がわからないことが認められる。証人石崎茂男の証言中右認定に反する部分は信を措くに足りず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。しかして成立に争のない乙第一号証によれば、右認定の隠れた瑕疵により、売却の目的を達することができないことを理由として、被告組合が原告に対し、昭和二十四年六月十三日、内容証明郵便にて残品について契約を解除する旨の意思表示をしたことが認められ、その頃右意思表示が原告に到達したことは当事者間に争がない。而して右契約解除の通知中、残品なる意思表示は明確を欠くが、被告青木助次の本人訊問の結果によれば、全量の三分の一は各学校に納入済であつて、帳簿上においても三分の一の金百五十万円は処理済になつていることが認められ、他に右認定を左右するに足る証拠はない。又同じく右訊問の結果によつて、被告組合は原告に対し、右契約解除の通知を発する以前から再三にわたり、不良品につき売却ができぬから取替えて貰いたい旨交渉していることが認められる。証人石崎茂男の証言中右認定に反する部分は措信し難く、他に右認定を覆えす証拠はない。右事実から判断するに、前示内容証明郵便到達以前から、原告は本件ミルク、ヌガーが大部分不良品であつたことを承知していたものと推測することができる。よつて前示契約解除の意思表示は当事者の意思を推測し、売却不能の残、即ち全量の三分の二について効力を生ずるものと解釈するを相当とすべきであるから、被告組合は原告に対しミルク、ヌガー売買代金債務金四百五十万円の内三分の二即ち金三百万円の支払義務なく、右金額を差引いた残額百五十万円の支払義務あるものと謂うべきである。よつて前示甲第二、三号証の各一、二約束手形金残債権合計二百五十万円について、被告組合同青木助次及び弁論の全趣旨により右手形に振出人のために保証したと認められる被告日本教育産業株式会社等は孰れも原告に対し前記ミルク、ヌガー売買代金残額百五十万円の限度において支払の義務あるところ、本訴提起後昭和二十五年一月二十七日被告組合から原告に対し、金十万円弁済したことは原告の自認するところであるから、右被告等は結局本件約束手形金につき金百四十万円の支払義務あるものである。

二、原告と被告村井健郎との関係について、

先ず原告は被告村井健郎が本件手形(甲第一乃至三号証の各一、二)に振出人のために保証をしたことを主張するので、この点を判断するに、被告村井健郎の本人訊問の結果によれば、乙第三号証の一、二、三に捺印した印影が村井本人のものであることが認められ、又鑑定人柳沢重明の鑑定の結果によれば右乙第三号証の一、二、三の印影と甲第一乃至三号証の各一に捺印してある印影とが同一であることが認められる。これらの事実並びに被告青木助次の本人訊問の結果を総合判断するに、被告村井健郎が本件手形三通(甲第一乃至三号証の各一、二)に記名捺印して振出人のために保証をしたことが認められる。被告村井健郎の供述中右認定に反する部分は措信し難く、他に右認定を覆えすべき証左はない。次に証人石崎茂男の証言及び被告青木助次の本人訊問の結果により真正に成立したものと認められる甲第二、三号証の各一によつて被告埼玉県学校給食消費組合が原告主張の如き本件約束手形(甲第二、三号証の各一、二)を振出し、原告がその所持人であることが認められ、他に右認定を左右に足る証拠はない。又証人石崎茂男の証言及び被告青木助次の本人訊問の結果により、真正に成立したものと認められる甲第一号証の一によれば、被告組合が原告主張の如き甲第一号証の一、二の約束手形を振出したことは認められるが、原告がその所持人であるとの証拠なく、かえつて右甲第一号証の一によつて埼玉銀行東京支店がその所持人であることが認められる。而して原告が右甲第二、三号証の各一、二の約束手形につき、満期に、支払場所に呈示して支払を求めたところ、孰れも支払を拒絶されたこと、甲第三号証の一、二の約束手形金債権二百万円の内百五十万円については原告主張の同額の約束手形金債務と相殺したこと及び被告村井援用にかかる被告埼玉県を除く爾余の被告等主張の抗弁に対する判断並びに本訴提起後被告組合から原告に対し金十万円弁済したことは前示認定のとおりである。よつて被告村井は被告埼玉県を除く爾余の被告等と同様に原告に対し甲第二、三号証の各一、二の約束手形金残金二百五十万円について金百四十万円の限度において支払義務あることになる。

三、原告と被告埼玉県との関係について、

原告は埼玉県教育委員会事務局体育課長が本件約束手形(甲第一乃至三号証の各一、二)に振出人のために保証しているから、究極的には埼玉県が右保証の責任を負担すべきものであると主張するので、この点を判断するに、本件甲第一乃至三号証の各一、二の約束手形には、埼玉県教育委員会事務局体育課長と記載し、その名下に同課長印を押捺してあつて、体育課長の職にある者の氏名の記載ないことは当事者間に争がない。凡そ県は自ら意思表示をなす能力なく、知事その他権限ある者が行為をなして始めて県の意思表示あるに過ぎないので、行為者の意思表示以外に県の意思表示なるものはない。従つて記名者がその氏名を記載することなく、直接県名又はその職名のみ記載し、捺印をなした場合においては、右記載が権限あるものによつてなされた行為であるかどうか、手形上の記載自体から判断できないから、右記名者が当該手形行為につき正当権限ある県の代表者自身たると、その手足たるとを問わず、常に行為者の署名を欠缺するものと言わなければならない。従つて本件の如く体育課長と言う単なる職名の記載は手形法上署名自体無効と解するを相当とする。殊に本件は証人高田進、早川一彦の各証言によれば、右記名捺印は同課長自身でなしたものでなく、当時体育課の職員早川一彦が同課長の何らの委任もないのに、擅に本件手形にそれぞれ埼玉県教育委員会事務局体育課長なるゴム印を押捺し、その名下に右課長の職印を捺印したことが認められるから、右記名捺印は偽造による行為として無効である。従つて孰れの点からしてもかかる無効の行為により埼玉県が手形法上の責を負う謂れはないから、他の事項を判断するまでもなく、原告の本訴請求は理由がない。

よつて原告の請求は、被告埼玉県を除く爾余の被告等に対し、合同して本件手形金中金百四十万円及びこれに対する満期後である昭和二十四年五月二十六日から右完済まで年六分の割合による法定利息の支払を求める限度において、正当としてこれを認容し、その余は失当としてこれを棄却し、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第八十九条、第九十二条、第九十三条、仮執行の宣言につき同法第百九十六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 西幹殷一)

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